小児白血病は、発症年齢・発症時白血球数・染色体異常の有無によってリスク分類され、それぞれに治療計画(プロトコール)があります。次男の場合は白血球の数が多かったので、治りやすいほうから数えて二番目の「ハイリスク群」に入ったと主治医から説明されましたが、資料や冊子を読むとハイリスクは「高危険群/標準的な治療では治りにくいタイプ」と書かれていました。言っていることは同じなんだけど、日本語にすると刺激が強すぎる・・・。
資料と冊子を読みながら気になる用語を蛍光ペンで色づけして読み返してみると、印をつけたのは「晩期障害」「生存率」「予後不良」といった箇所ばかり。ネガティブになっている自分に気づく。治るようになったとはいえ、簡単に治る病気ではないと思い知らされます。
ひとりになると、病気に立ち向かっていく強い自分と現実として受け入れられない自分が、心の中に入れ替り現れて混乱させます。告知後1か月は、「前向きに考えようよ。バカねぇ、泣くなんて」とみんなを笑い、寝っている次男の隣で声をおしころして泣く日が続きました。医師や看護師にも、自分の弱さを見せないことが、自分自身を保つ唯一の手段でした。
「どうしてうちの子が白血病に・・・」自分自身に問いかける。
「どうしてもっと早く見つけられなかったの?」自分を責める。
「どうして私じゃなくて、次男なの?」無力な自分が情けない。
そんなとき、私の心を支えてくれたのが斎藤一人さんの「旅先で見た犬のクソは忘れなさい」という言葉。
人生は旅です。旅の中で、山と出会い海辺で寄せては返す波とたわむれ、川のせせらぎに心洗われ、その土地の人の優しさに触れたりします。そんな旅の途中にも、道端に犬のクソを見ることだってあるでしょう。
でも、旅の間中、ほんの一瞬見た犬のクソのことばかり考えていて、楽しい人生ができるでしょうか。犬のクソがどんな色をしていて、どんな形で、どれくらいの大きさだったかということをこと細かに人に話しても、誰も喜びません。人は旅で見た美しい風景やおいしい料理、土地の人の話を聞きたいのです。
病気のこと、嫌なことばかりに焦点を当てていたらその人生は嫌な人生になってしまいます。嫌なことに焦点を当てるのではなく、楽しいことに焦点を当てるのです。そうすれば、人生が楽しくなる。心が豊かになる。その豊かな心で、誰かを幸せにすることもできるのです。
病気の人でもできること、その中でも一番簡単なこと。それは旅先で見た犬のクソは忘れること。そして胸を張って堂々と歩くことです。
引用元: 斎藤一人「変な人が書いた成功法則」講談社プラスアルファ文庫より引用
クソに色づけする作業をしていた自分の隣で、その日一日を楽しく過ごしている次男が私を見て笑っていました。この子の生きる力を信じよう。一日を大切に生きていこう!・・・こうして、期間限定の強い自分が現れました。