「ひとみさん、話せるようになったのね」
私が小学校2年か3年生の運動会に、1年生の時に担任だった先生が同級生に言い残して帰っていったそうです。私から声を奪った先生・・・。

私は小学1年生の時にいじめに遭い、家では普通に話して笑えるのに、学校では一言も話せず笑うこともできなくなりました。それが「場面緘黙症」とわかったのは大人になってからです。

突然声が出なくなる・・・場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)になった原因は?

場面緘黙症は、話すことをあきらめたり、意識して黙っていたりしているのではなく、心の中では伝えたい思いが溢れているのです。伝えたい言葉はたくさんあるのに、大きく息を吸ってお腹から声を出そうとしても発声できず、口から出てくるのは息だけ。

場面緘黙(かんもく)とは、家などではごく普通に話すことができるのに、例えば幼稚園や保育園、学校のような「特定の状況」では、1か月以上声を出して話すことができないことが続く状態をいいます。典型的には、「家ではおしゃべりで、家族とのコミュニケーションは全く問題ないのに、家族以外や学校で全く話せないことが続く」状態です。
引用元: NHKハートネットTV「専門家に聞く、場面緘黙(かんもく)について知っておきたいこと」

小学校入学までは特に問題なく過ごしましたが、小学1年生になると、クラスメイトと話したり授業で発表したりするのが怖くてモゴモゴとしゃべる私は次第にクラスメイトからいじめられるようになり、ついには担任の先生からも激しく叱責され、理不尽な対応をされるようになりました。

学校に行きたくないのに行かなければならない・・・私は学校に着くと声が出なくなりました。家では大きな声も出て大笑いするのに、学校では口を動かして発声しようとするのに息しか出てきません。何度やっても同じ。毎日おしゃべりしていた親友とさえ会話をしたくても声が出なくなり、無言で学校生活を送る日が続きました。

なぜ学校ではしゃべれないの?

家ではうるさいほど騒いでいるので、母は私の症状に気づかず、学校から連絡を受けて驚いていたのを覚えています。

母に「なぜ」と聞かれましたが、意識して無言でいるわけではないので当時の私に原因はわかりませんでした。ただ、常に私の心の中にあったのは「私はしゃべると叱られる」「私の言うことは誰も信じてくれない」という思いと強い恐怖でした。

「おはようございます」も言えない。親友と会話もできない。私は一体、どうなってしまったのだろう・・・これから、どうなってしまうのだろう・・・不安は募るばかりです。

NHKハートネットTV「話したいのに、話せない…。“場面緘黙(かんもく)”を知っていますか?」

私に声を取り戻してくれた保健室の先生

ムスカリ

「ひとみさん、学校に着いたら先生に会いに来て」

保健室の先生が私に声をかけてくださいました。最初は警戒していたものの、保健室の先生はいつも優しく声をかけてくださり、徐々に心を開いて先生に会いに行くようになりました。しかし、まだ声は出ません。「何かしゃべらないと・・・」焦る気持ちは、私の声を喉で潰します

「ひとみさん、先生だけに『おはようございます』と挨拶してほしいな」

最初は口を動かすことしかできなかったのが、次第に小さな声で「おはようございます」だけ言えるようになりました。初めて声が出た時に、先生はとても喜んでくださって、私はそれがとても嬉しくて、焦りと不安が和らぐと同時に誰にでもしゃべれるようになりました。

場面緘黙症になる前は担任の先生やクラスメイトからのいじめはひどかったのですが、それ以降は悲しい記憶は少なくなり、クラスと担任が変わると友だちと笑ったりおしゃべりできるようになりました。

場面緘黙症から回復した後は?

場面緘黙症から回復した後も、小学生の頃だったと思うのですが躁鬱状態が続いて精神科医にかかたことがあり、子どもの頃から生きにくさをずっと感じながら毎日を過ごしています。

後遺症なのでしょうか。もともとの性格なのでしょうか。今もしゃべるのは苦手。でも、自分の関心のある分野になると話が止まらなくなるんですよ。我ながら困ったものです。

自分自身が体験談したことは記憶に深く残るので話せるのですが、誰かから聞いた話や見たことなどを順序立てて話そうとすると頭の中で言葉が絡まってしまい、口から出てくるのは相手に伝わらない言葉が小さな声になって出てくるだけ。自分では大きな声でハッキリしゃべっているつもりですが、どうやらモゴモゴしゃべって聞き取りにくいようです。

話せない分、相手に伝えたいことはすべてノートに書いていたので、書くことは好きですし得意です(上手い下手は別として・・・)。

精神面では今も不安定になるときがあるので、そんな時は無理せず、刺激になるようなことからは離れて静かに過ごして乗り越えています。あとは、何かに没頭する、好きなものを食べてたくさん寝る!できるだけ、不安につながる闇を自分で広げていかないように。