急性リンパ性白血病が再々発してしまった3歳の女の子 はるちゃんのお父様(藤原正典さん)と親戚の方々が、15歳以下の子どももCAR-T療法臨床試験の対象となるよう署名活動を始められ、SNSで拡散によりご存じの方もいらっしゃるでしょう。
私はその活動のまとめページを作成したサイト運営者で、小児がん経験者の母親(山崎仁美)です。藤原さんの親戚の方が署名活動をしている投稿を見かけ、藤原さんと親戚の方々とメールや電話をしながら署名活動協力を呼びかけました。
しかし、今回の署名活動はその背景や病気と治療に関する情報が不足していたために誤解を招き、準備不足のためにご迷惑をおかけしました。この1週間は、藤原さんにはるちゃんの病気や経過に関する情報を得て、CAR-T療法に関する確かな情報を得るために時間がかかり、皆様にご説明するのが遅くなりました。申し訳ございませんでした。
以下に、白血病とCAR-T療法に関する情報(医師による監修済み)、藤原さんからいただいたメッセージを掲載いたしました。署名にご協力いただいた皆様へ、感謝を込めて。
お詫び
上記の件について、藤原さんからメッセージをいただきましたので、ご本人の許可を得てそのまま掲載させていただきます。
最初に皆様にお詫びさせて下さい。
本署名を集めるにあたり、特定の個人名を記載しました。結果その方々の関与が疑われてしまい大変ご迷惑をおかけしました。
また、署名活動をある大学で行いましたが、大学に事前の許可を得ていなかった為、大勢の人が集まってしまい大学、関係者様にご迷惑をおかけしました。
また署名中に病名の記載に誤りがありましたこと(「B型細胞性急性リンパ性白血病」⇒ 正しくは「B前駆細胞型急性リンパ白血病」)、「臨床試験」を「治験」と記載しているという誤りがありました。病名の間違いは私の確認不足でした。疑念を持たれている方がおられるのは当然だと思います。
ご迷惑をおかけしました皆様、ご署名頂きました皆様に深くお詫び致します。藤原
署名活動に至った経緯と中間報告
はるちゃんの病気について
発病から再発まで
はるちゃんは2015年7月(0歳5ヶ月頃)に乳児MLL(Mixed Lineage Leukemia)遺伝子再構成陽性群 B前駆細胞型急性リンパ白血病を発症し、5か月の化学療法の後に造血幹細胞移植を受けましたがすぐに再発してしまったため、4ヶ月間の化学療法の後、2016年3月に2度目の造血幹細胞移植を受けます。
再々発から現在まで
はるちゃんは「乳児白血病」に分類され、8割の患者が治癒すると言われる「小児白血病」と違い予後不良です。また、乳児白血病の中でもMLL遺伝子の転座(遺伝子の一部が分離して別の染色体に結合すること)があり、「MLL遺伝子再構成陽性群」は難治性で予後不良です。
そして2018年3月、はるちゃんのご両親は厳しい事実を突きつけられます。白血病が再々発してしまったのです。化学療法や造血幹細胞移植で治癒する可能性は20%、CAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法)を受けたとしても50~60%という厳しい数字を聞くことに。
しかもCAR-T療法は、まだ誰もが治療を受けられる段階ではありません。今年1月に開かれた厚生科学審議会で、最初の臨床試験は16歳から60歳で骨髄移植後に再発して他に治療法がない患者さんを対象とすることで承認が得られ、これから臨床試験が始まるところです。
たくさんの子どもたちがCAR-T療法を受けられる日を待っています。子どものがんは大人と違って病状の進行が速いため、その日を待ちながら亡くなったお子さんもいます。はるちゃんも時間がありません。
「子どもの命が助かるならば・・・」それは、難病と診断された親ならば誰もが思うことでしょう。光は射しこんでいるのに、そこへ向かう道が閉ざされて泣く泣く引き返していく仲間の想いも背負って、はるちゃんのお父さん、藤原さんは一歩踏み出してくれたのです。
CAR-T療法とは
患者から採血して得たT細胞にCAR遺伝子を導入してCAR-T細胞を作ると、T細胞上にCARが発現して、がん抗原を認識するアンテナの役割をしてくれます。がん細胞の表面に多く発現している抗原を認識するCAR-T細胞をつくれば、これまで普通のT細胞が認識できなかったがん細胞を確実に攻撃できるようになります。
引用元: 一般社団法人名古屋小児がん基金HPより
署名活動の経過
署名活動を開始
4月初旬、藤原さんが知り合いのブログなどを通じて署名活動を呼びかけられましたが、目標値3,000筆にはほど遠い状態でした。そこで2018年4月14日、親戚の方がtwitterで署名活動協力を呼びかけたところ、半日でリツイートは約1.3万、インプレッションは約117万に達し、協力したいという声がたくさん寄せられました。
私がこの署名活動を知ったのは15日昼前。友達のブログ経由で情報元の方のアカウントにたどり着くと、問い合わせや応援メッセージをくださる一人一人に丁寧に対応する親戚の方々の様子が目に留まりました。
私の息子も3歳の頃に急性リンパ性白血病になり、化学療法を受けて治癒しました。同じ病気を経験した子どもの親として何か力になりたいと思い、まずは親戚の方が皆さんの質問に回答した部分をまとめて記事を作り、藤原さんの親戚の方々と連絡をとりながら小児がんのお子さんがいる仲間に協力を呼びかけると、助けてくれる方がたくさん集まりました。
中間報告
こうして署名活動の情報は拡散し、一時はリツイート約7.9万、インプレッションは約845万にまで達しました。その後、親戚の方はお友だちと一緒に5日間で2,208筆を受け取り、藤原さん宅へ届いた1,832筆、4月20日現在で合わせて4,040名が藤原さんの想いに賛同してくださいました。
個人で署名活動をするリスク
この署名活動が実在する人物によって行われているという証拠として、藤原さんは はるちゃんの顔写真と名前、ご自身の名前と連絡先をすべて公表されました。インターネット上に個人情報を掲載するリスクは非常に大きい。それでも藤原さんは、愛する娘のために多くの犠牲を払って行動しました。
この署名だけでなく、病気を知ってもらうため、小児がん経験者の声を届けるために、経験者本人や親たちはマスコミなどを通じて世間の目に触れる場所に出ることがあります。それはとても勇気がいることです。あえて個人情報を公表して世間の目にさらされる必要はないのです。
それでも一歩前に出るのは、同じ病気で苦しんでいる仲間たちに向けた私たちなりの応援の仕方。たとえ批判されようと、私たちの想いを受け止めてくださる方へ届けばいい。息子が白血病と診断されてから知り合った私より少し年下の小児がん経験者の姿に、この13年間ずっと支えられてきたように、小児がん経験者やご家族の活動は闘病中の方の支えになり希望の光になると思っています。
皆様からのご質問
SNSで見かけた疑問や、直接お問合せいただいた内容に関して藤原さんに伺いました。
小児がん関連団体の協力のもと、署名活動をしたほうがいいのでは?
山崎:小児がんに関する団体や患者会などの協力または助言を得られれば、もっと安全な方法で周りの方にご迷惑をおかけすることなく署名活動が進められたかもしれません。患者会に所属していない藤原さんご家族にとって、患者会を探して説明し賛同を得て、協力者を募り準備する時間はありませんでした。
なぜフリーメールアドレスや携帯電話なのですか?
藤原:自宅に固定電話を置いてません。フリーメールで仕事もしているので、それで十分とその時は考えました。
署名目標3,000筆の根拠とTwitterでの拡散の理由は?
藤原:根拠は特にありません。Twitterについては多くの署名が頂きたかったので、拡散して頂くようにしました。
署名を届ければ、臨床試験の対象年齢は引き下げられるのですか?
藤原:今回の承認は厚生科学審議会 (2018.1.24開催)で決定したものですが、その前に大阪大学認定再生医療等委員会の第二特定認定再生医療等委員会の審査の通過を受けたものです。認定再生医療等委員会は第三者の立場から当該医療行為を評価しており、それが特定の圧力によって歪められないことが制度上担保されています。それは我々の意見も同様のことと思います。このことから決定事項は動かし難く、同時に海外治療も同時に検討する必要があると考えています。
海外で治療を受けたほうが良いのでは?
藤原:娘は過去の治療で血栓性微小血管障害症(TMA)になり、気圧の変化に耐えられるかわかりません。また、抗がん剤治療後の免疫力が低く体力もない時期に渡航するのは、身体への負担が大きくなります。
ご賛同いただける方へ
署名の方法
誠に勝手ながら、最終締め切りを4月30日(月)当日消印有効とさせていただきます。
A4サイズで印刷し、署名用紙に記載の住所へ郵送してください。詳細は下記ページをご覧ください。
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