皆様からのご意見をもとに、2009年1月25日(日)小児がん、特定疾患親の会有志で話し合った結果をご報告いたします。
小児がん、特定疾患親の会有志 意見書
参加団体
- すくすく(網膜芽細胞腫の子どもを持つ家族の会)
- コスモス会(国立がんセンター中央病院親の会)
- 小児がん治療開発サポートSUCCESS
- ユーイング肉腫家族の会
- LCH(ランゲルハンス細胞組織球症)患者会
- 勇気の会(国立成育医療センター小児腫瘍血液疾患患者会事務局)
- 小児脳腫瘍の会
- 肝芽腫の会
- 東京大学医療人材育成講座
- わたぼうしの会(岐阜大学病院親の会)、輝く子どもたち・小児がんみんなの闘病記
小児がん、特定疾患を囲む多くの問題点
1. 忘れ去られた小児のがん
小児のがんの中でも希少疾患(固形がん、LCHなど)、治療法が難しい血液疾患などは初期治療が適切、迅速になされないために、大変な後遺症を負ったり、尊い子どもの命が多く失われている。情報社会、また地方自治体のがん対策基本計画から取り残されている実態がある。現在山形県 茨城県 静岡県 愛知県 大阪府などでは小児がんに関する基本計画が考慮されているが、それ以外の地域についてはインターネットなどでの公表では言及されていない。
2.拠点病院化、専門の医師の育成の急務
上記の理由は小児がんなどの拠点病院が確立されていず、もしくは拠点病院となるべき病院(がんセンターなど)で小児科が撤廃されたり、縮小されているため、症例数を集め、適切な情報のもと高度な専門的集学的治療を行うことができていないことにある。そのため、適切な治療はもとより治療開発、治験、薬の認可なども進めることができない。
3.経済的負担、将来への大きな不安
疾患により、一生薬を飲まなければない場合や、後遺症、晩期合併症を背負う患児家族にとって、小児慢性特定疾患の助成が切れる20才以降、自立することが難しい場合が多く、大変な経済的負担であり、保険には入れないことから、生活の保障が全くない。
4.患児家族の緩和ケア
常に死と隣り合わせの状態に置かれるなど、大変なストレス下にある患児家族にとって、痛みのケア、心のケア、終末医療を含めた緩和医療「患者である子どもと家族の心とからだのすべての包括的医療」は急務である。
5.学校などでの受け入れ
こどもの生活の大きな割合をしめる学校、幼稚園、保育園などで、疾病が正しく理解されず、また適切なケアが受けられない。また院内学級などが確立されていないことから、等しく学ぶ権利が失われている。上記により大変な負担(親が行うケア、精神面など)が生じている。
希少疾患の情報・適切な治療法が医療者側に伝わっていないことから起こる不適切な診断・初期治療から大変な事態となってしまった実例が大変多くあがっている。
また、代わって担う医療機関がないにもかかわらず地方がんセンターでの小児科の閉鎖問題、行政の助成制度の応対不足(小児慢性特定疾患助成制度などの各種助成の手続きの煩雑さと認定の遅れによる経済的負担など)、親の会と病院の医療者の対立問題、薬剤認可がなかなかおりない問題、医療者側からの情報が少なく、小児がん関連の情報をたやすく集められないなどの意見が聞かれた。
希少疾患の専門医療を受けるために、遠路の受診による患児家族の滞在費、交通費の負担があまりにも大きく、公的資金援助などを訴える声も多く聞かれた。現在大変問題視されている小児医療全般の中で、小児がん関連の各状況は大変な危機的状況に陥っている。
患者側、行政側、医療者側の小児がんに関する各方面での情報不足・連携不足・対話不足から問題が生じている。
予算について
以下の点についての予算を希望する。
- 拠点病院化への予算―小児がんに特化した拠点病院整備についての予算を希望する(各疾病に精通した小児腫瘍専門医、小児専門看護士、チャイルドライフスペシャリスト、保育士、院内学級、小児専門臨床心理士の配備など)
- 患者、医療関係者、行政との連絡会費用。遠隔地への受診の交通費、宿泊代への補助。
- 20歳以降の医療費に関する助成制度への予算
- 包括的な緩和医療に対する予算―大変なストレス下、希望の終末医療ではなかった、PTSD、うつ、他の疾病となってしまった例が多くある患児・家族のために早急な支援が望まれる(適切な終末医療の確立―医師・看護士の配備、ソーシャルワーカー、臨床心理士の配備)
- 学校での患児受け入れに対する予算―学校での受け入れ状態を向上させるための補助員、学校教育コーディネーターなどの配備。施設向上費。