3ヶ月も経過してしまいました・・・2019年6月8日(土)に、中区役所地下ホールで名古屋小児がん基金3周年記念イベントが開催され、盛会のうちに終えることができました。今回も私は、名古屋小児がん基金運営スタッフとして参加しました。
今回は国際ジャーナリストの堤未果さんが公演されるとあって、来場者は堤さんのファンの方が多かったように感じます。小児がんをご存じない方が、今回のイベントで小児がんに関心を持ってくださったことは大変嬉しいことです。
前半は、名古屋大学小児科 教授 高橋義行先生から「CAR-T療法の開発状況」、講師の村松秀城先生から「ゲノム医療の現状」についてお話を伺うことができました。
CAR-Tは1回投与しただけで治る夢のような薬!?
「目の前にいる患者さんを助けたい」先生方の強い想いによって、名大でCAR-T細胞療法の研究が進められています。CAR-Tは1回投与しただけで治る夢のような薬ではありません。海外では、2回、3回投与する臨床試験が行われています。高額なCAR-Tができただけでは解決しないのです。
シドニー大学:piggyBacトランポゾン法CD19/CAR-T療法の臨床試験報告
これまでのCAR-T療法の多くは、患者さん自身、つまり自分のリンパ球を用いていましたが、シドニー大学では、HLA一致血縁ドナーのリンパ球からCD19CAR-T細胞を製造しています。つまり、ドナーリンパ球輸注にCAR-T細胞を用いたのが新しい点です。投与回数も、1回のみでなく、4週間以上あけて3回投与しています。対象は移植後の再発症例ですが8例全例で寛解が得られ、他人の細胞でありながらサイトカイン放出症候群も軽度で副作用による死亡例はありませんでした。
引用元: 名古屋小児がん基金「CAR-T療法治験・臨床試験報告と今後の課題~日本血液学会総会の報告から~」
CAR-T療法治験・臨床試験報告と今後の課題~日本血液学会総会の報告から~|名古屋小児がん基金 第80回日本血液学会総会が、2018年10月12日から14日の3日間、大阪で開催されました。日本血液学会総会は、血液関係ではわが国最大の学会で、参加者は7,000人に達します...
3種類の異なるCAR-Tを3回投与、3年経過した患者自身が発表
南方医科大学病院からは、成人の再発/難治性ALL患者さんに対してCD19-CAR-Tを2回投与する臨床試験を行ったところ、88%の患者さんで完全寛解が得られたことが報告されました。
ロシアから紹介され中国でCAR-T治療を受けた患者さん本人が、自身の治療経過を発表しました。この患者さんは、縦隔原発悪性リンパ腫が再発し、脳にも転移していましたが、CD19, CD22, CD30と3種類の異なるCAR-Tを都合3回投与することで、3年経過した現在も再発なく元気に過ごされています。
引用元: 9か国の医師・研究者が集いCAR-T療法について討論~GIMI 2019
9か国の医師・研究者が集いCAR-T療法について討論~GIMI 2019|名古屋小児がん基金 GIMI scientific program 2019の参加報告 名古屋大学 小児科 若松学 私は、このたび2019年4月20日と21日に中国の深圳(シンセン)で開催されたGIMI(Geno-Immune Medica...
「自分たちでCAR-Tを作らないと、目の前の患者さんを助けられない」
わが子にCAR-T細胞療法を受けさせたいと願う親さんは、日本にもたくさんいらっしゃると思います。安価にできるCAR-Tが名大病院にあるのに、子どもたちは受けられないなんて・・・(名古屋大学が行っているCAR-T細胞療法の臨床試験は、大人を対象に継続中です)。
「自分たちでCAR-Tを作らないと、目の前の患者さんを助けられない」
高橋先生の言葉は、様々な感情が込められているように聴こえました。
助けたくても助けられない、助かるかもしれない治療法があるのに提供できない。先生方も苦しい想いを抱えながら研究を進められていらっしゃることと思います。名大の先生方には「大変だからCAR-Tを作らない」という選択はなく、世界最高レベルの医療を子どもたちに届けるためには、自分たちに何が出来るのかを常に考えていらっしゃいます。先生方の研究を応援する方法は、名古屋小児がん基金のホームページ「寄付する」をご覧ください。
白血病に肺がんと同じ異常な融合遺伝子を発見
村松先生は、若年性骨髄単球性白血病(JMML)の患者さんの遺伝子から、大人の肺がんに見られるのと同じ異常な融合遺伝子を発見されました。その治療を受けたお子さんと2周年記念イベントで初対面された時の様子が、下記の中日新聞に掲載されています。
治すことが難しい病気を「治る病気」に変えていくための努力が濃縮された内容でした。この診断方法と治療法が10年前にあったら、あの子は元気になって退院できたかもしれない・・・空にいる子どもたちのことを思い出しました。
小児・AYA世代がんのピアサポートを広げる活動
東京都立小児総合医療センターの松井基浩先生は「小児がん経験者・小児腫瘍科医としてできること」として、ご自身の闘病経験から考える小児・AYA世代がん経験者の社会的困難について、患者会活動を通じて考える小児・AYA世代がんピアサポート、小児・AYA世代がんピアサポートの現状と未来について話されました。
松井先生は、小児・AYA世代がんのピアサポートを広げる活動もしていらっしゃいます。大人になった小児がんの子どもたちの居場所が増えていくのは、親として嬉しい。松井先生、応援しています。
第1回AYAキャンサーサバイバーズミーティング
~AYA世代がん経験者が考えたAYA世代がん患者のための交流イベント~
「逃げ切れ 日本の皆保険制度」
国際ジャーナリスト堤未果さんは、アメリカと日本の保険制度の違いについて話されました。入っている生命保険によって受診できる病院が違うことや、高額な医療費・・・。
息子が治療を受けていた頃、海外で白血病の治療を受けているお子さんが入院ではなく外来で通院して治療を受けていると聞いたことがあります。息子が入院して初めて受け取った医療費の明細書は、300万円を超えていました。小児慢性特定疾患の医療費助成がなかったら・・・皆保険制度がなかったら・・・と考えるとぞっとしました。
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イベントの写真
当日は忙しくて写真を撮る余裕がなかったので、「本当に盛会だったの?」と疑いたくなるような、人物が入っていない閑散とした写真しか手元になかった・・・。
名古屋小児がん基金のホームページや、司会の矢野きよ実さんのブログにはたくさんの写真付きで活動報告が公開されていますので、ぜひご覧ください。