壁新聞から始まった「輝く子どもたち」~情報発信と患児家族の交流

輝く子どもたち

次男が白血病と診断されてから2か月後、私は壁新聞を作り始めました。小児病棟の掲示板に壁新聞を貼ると、お母さん方が足を止めます。そこから患児家族の交流が広がっていきました。

今回は、当サイトができるまでの経緯について書きました。長くなりますがお付き合いください。

目次

白血病は治るようになってきた病気?

小児がんインフォームド・コンセント

輸血と抗生剤のおかげで元気になった次男(2004-09-04撮影)

2004年9月に、当時2歳11か月の次男が急性リンパ性白血病と診断されました。小児がんの中で最も患者数が多い病気です。

白血病と診断される前日、私は次男の病状をインターネットで検索しました。何度検索しても、白血病を克服した子のWEBサイトには辿り着きません。

告知された時に主治医から「白血病は治るようになってきた病気」と説明を受けました。しかし、私はその言葉を疑う気持ちがありました。実際に治った人を知らなかったからです。

「5年後、息子は生きているだろうか・・・」

当時は今のように、小児がん経験者がメディアに登場することはありませんでした。白血病といえば、悲しい話ばかりが取り上げられます。

壁新聞から始まった「輝く子供たち」

クリーンリーム | 無菌室

病名が確定し、個室のクリーンルームに移ると治療が始まりました。面会謝絶の札が貼ってあり、大きな空気清浄機が稼働している部屋です。

私は24時間付き添い生活。何かしていないと、悪いことばかりが頭に浮かんできます。そんなとき、小児病棟の廊下に貼ってあった壁新聞を思い出しました。この病棟で入院生活のある子のお母さんが作られた手書きの壁新聞です。これだったら、病室で付き添いながらできます。

私は壁新聞「輝く子供たち」を毎日更新するようになり、朝起きると掲示板に壁新聞を貼るのが日課になりました。

付き添いのお母さん方が壁新聞の前で立ち止まり、くすっと笑ったり、時には涙ぐんだり。壁新聞を通じて、患者家族の交流が広がっていきました。

工作が得意なお母さんは、工作の壁新聞「親子であそぼう」と共に工作キットを提供してくださり、子どもたちに大人気。面会の待ち時間に退屈しているきょうだいたちも大喜びしていました。

壁新聞からWEBサイトへ

輝く子どもたち

付き添いの親同士で交流が深まり、それは大きな支えとなりました。けれど、退院後はまた孤独な環境に置かれることになります。

私は次男が退院して間もなくWEBサイト「輝く子どもたち」を開設し、交流の場をインターネット上につくることにしました。15年に渡り闘病記や小児がんに関する情報を発信し、コミュニティサイトを運営し続けています。

退院後も外来治療が続いていたので、その度に壁新聞を小児病棟へ届けていましたが、WEBサイトと両立ができず、壁新聞は193号をもって廃刊となりました。

「治療を終えて元気になった子の闘病記を発信したい。そして、点と点、人と人を繋ぎたい。」

15年前は、今のようにインターネットで小児がんの情報を簡単に得ることができなかったので、私が「知りたい」と思ったことを調べてまとめ、次男の治療の経過とともに「輝く子どもたち」に詰め込んでいったのです。

そして、気兼ねなく想いを書き出せる場所、寄り添う仲間づくりが必要だと感じ、小児がん患児家族が自由に利用できるコミュニティサイト「小児がん みんなの闘病記」(現在は閉鎖し、「手をつなごう。」を運営)、お子さんを亡くされた家族のコミュニティサイト「天使になった子どもたち」を開設して、同じ立場の方が交流できる場を作ってきました。

ネットを通じて広がる患児家族の交流、昔と今

2004年頃はブログが普及しつつあったものの、小児がん闘病記を発信する方の多くは、ホームページ作成ソフトを使ってWEBサイトを構築していました。他の家族との交流は電子掲示板(誰でもコメントを投稿でき、返信・閲覧可能なシステム)を利用し、WEBサイトとセットにして運営している方がほとんどでした。

そして徐々に、ブログや「mixi」を利用して闘病記を発信し、仲間と交流する人が増えていきました。現在はFacebookやTwitter、Instagram等のSNSが普及し、利用者も増え、リアルタイムで情報が伝達されます。ブログで闘病記を発信する方もさらに多くなり、小児がん患者家族同士が繋がることができるサービスやネットワークは豊富にあります。

誹謗中傷で苦しんだ時期もあった

ブログを開設している方の中には、コメント欄に誹謗中傷を書き込まれて悲しい思いをされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。私も同じような経験があります。それは、小児がんとは無縁の方だったり、小児がんの子どもがいるご家族であったり。

同じ立場であっても経験や考え方が違うと、溝が生まれる。誹謗中傷を書き込む方は、妬みや悲しみの感情を抑えきれずにコメントを投稿してしまったのでしょう。

こちらが反論すると、相手はさらに興奮してしまいます。誹謗中傷は削除し、何もコメントを返さないのが一番だと思います。

ブログを15年続けられる理由

治療を受ける子ども

私自身、壁新聞やWEBサイト制作に費やす時間が多かったため、子どもたちと遊ぶ時間は少なく、反省することばかり。

皆さんがご家族と過ごす時間が少しでも増えること、息子の闘病が何かの参考になればいいなと思い、発信を続けています。あとはただ単に、WEBサイトを制作することが好きだから。

15年で得た情報やご縁を、今闘病中の方々に繋げられるように、これからも発信してまいります。

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