小児白血病の臨床研究への参加と流れ

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臨床研究への参加について

どの抗がん剤を、どのように組み合わせて、どのくらいの期間治療したらよいかは、世界中とりわけ欧米の「比較治療研究」の積み重ねにより確立してきました。

しかし、まだ完璧な治療法はありません。抗がん剤にはそれぞれ特有の副作用があり、できるだけ副作用が少なく、かつ将来にも障害を残さない治療法が求められます。このようにまだまだ解決しなければならない問題が多くあり、より良い治療法を確立するためには今後も治療研究が必要なのです。

比較治療研究とは
今までに一番良いとされてきた治療法(標準的治療法)と新しく考えられた治療法を比較し、さらによい治療法を生み出していく方法。

参加することで得られる利益と不利益

最も優れた治療成績が得られるように治療計画が作成されています。そのため、従来の治療法より優れた治療効果が得られる可能性があります

一方、予想される治療成績はあくまで見込みであり、従来の治療法を下回ることも考えられます。また予想外の副作用や晩期障害が起こる可能性があります。

臨床研究に参加しない場合は?

治療研究に参加するかどうかは、まったく自由です。参加しない場合は、従来の治療法を行うことになります。また治療研究に参加した場合でも、気が進まなくなれば途中でやめることも自由です。その場合でもやめた人が不利益をこうむることはありません。

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プロトコール(プロトコル)とは

プロトコールとは「臨床研究実施計画書」です。小児がん治療における特徴は、臨床試験を重ねる中で治療レジメンの比較研究を行い、着々と治療成績を上昇させるとともに、副作用を必要最小限にする治療が模索されてきました。

プロトコール研究では通常標準的治療レジメンと新しい治療法がランダム化(無作為割付)されて登録され、多施設共同で比較試験がなされます。私たちは、ランダム化がいわゆるくじ引きや抽選による「あたりとはずれ」がある商品獲得とはまったく異なることを理解しなければなりません。

うちの子のプロトコールは?

実際に行われる予定のプロトコールの詳細をお知りなりたい方は、主治医からプロトコールの治療予定表をもらって参照してください。

告知を受けたご家族へ

治療について不安を抱えるご家族には「主治医からお子さんのプロトコールの治療予定一覧表のコピーをもらってください」と話しています。

プロトコールとは、治療計画予定表のこと。白血病治療は手探りの状態で進められるのではなく、白血病治療研究グループによってつくられた治療計画がリスクごとにわけられています。

コピーをそのまま頂いても記号や英語ばかりで何が書かれているのかさっぱりわかりませんが、これがあれば使用する抗がん剤の名前、使用量、使用期間などすべてわかります。

病名告知をしたときにプロトコールのコピーを家族に渡す医師、患児のベットサイドに貼って医療者と家族で使うようにしている病院、渡す必要はないと断る医師・・・いろいろです。

もし断られた場合は、「事務局へ直接問い合わせてもいいでしょうか?」と聞いてみてください。事務局から直接入手する方法もありますが、医師との信頼関係を壊しかねないということで、すんなりいただくことはできないようです。私たちが見てはいけない文書ではありませんので(JACLS、CCLSG事務局には確認済み)、遠慮なく医師にご相談ください。

どのような抗がん剤が使われるのか前もって知っていれば、それらの症状が出たときの対処法を調べることができます。心の準備ができます。退院予定日や治療終了予定日を算出し、目標をもって生活することもできます。医師に聞くことはとても勇気のいることですが、信頼関係を深めるためにも大切な一歩です。

すべてが受け身・医療者に任せるのではなく、家族もいっしょになって治療に取り組めるように、子どもの病気と治療について一緒に勉強しましょう。(管理人はな より)

研究計画書の立案から登録開始まで

1.研究計画書の立案
研究代表者またはプロトコール委員が研究計画を立案し、プロトコールを作成する。
2.学会・臨床試験審査委員会で評価
作成されたプロトコールは、まず学会または研究グループの定める臨床試験審査委員会により「科学性と倫理性」の評価が行われ、必要であれば改訂を繰り返して完成する。
3.登録開始
研究参加施設の倫理委員会または研究所の審査委員会によるさらなる評価を経て、初めてそれぞれの施設においてactiveとなり、患者の登録が開始される。
4.データを送る
研究参加施設の医師は、登録患者に対してプロトコールに規定されたとおりの治療を施行し、得られたデータをデータセンターへ送る。
5.データベースへ登録
データセンターに集められたデータをデータベースへ登録。プロトコール治療に問題はないか、重篤な有害事象が発生していないか、などの定期的なモニタリングをタイムリーに行う。
6.データの解析
登録が予定登録症例数に達すると、登録はそこで中止となり、最終症例のデータが集め終わった時点で解析が行われる。
7.最終結論の発表
得られた解析結果に基づいて、最終結論を導き出し、報告書または学術論文を発表する。
引用
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