就職の面接で「小児がん経験者であること」を言うのか、言わないのか・・・小児がん経験者であることを伝えたら不利になるのではないか・・・いろいろと考えてしまいます。
次男は志望した会社に、自分が幼いころに白血病だったことは伝えず、発達障がいで困っていることなどを自分の言葉で伝えました。そして、2020年2月7日に内定通知をいただくことができました。18歳の春、社会人としてスタートです。
今日は、就職の面接で「小児がん経験者」であることを言う?言わない?について取り上げます。
「小児がん経験者」であることを言う?言わない?
我が家では次男が就職試験を受ける前に、会社に小児がん経験者であることを伝えるのか・伝えないのか、将来はどうしたいのか、改めてふたりで話し合う機会を設けました。その時に観たのが次にご紹介する動画です。
小児・AYAがん経験者のための就活講座
一般社団法人CSRプロジェクト 代表理事 桜井なおみさんと、公益財団法人がんの子どもを守る会 ソーシャルワーカー 樋口明子さんによる「小児・AYAがん経験者のための就活講座 2限目【言う?言わない?あなたにとってがん経験とは?】」。
就職することだけがゴールではない
就活には自分のがん体験の『オキドコロ』を考えることが非常に重要です。この『オキドコロ』というのは、つまり『自己理解』ということになってきます。
自分のことを何も知らない人に、どうやって自分を伝えたらいいのだろうか。あるいは、お互いに関係を知ったり経験を知ったりして、一緒に働くのかを判断すること。
就職活動を分解すると、『サバイバーであること』『就活をすること』このどちらを重視するのかということを天秤にかけるような作業が必要になってきます。病気のオキドコロは人によって様々です。正解はありません。
例えば、自分のがん経験を前面に出して就職活動をしたいという人がいるかもしれません。若しくは、がん経験というのは様々な経験の中のひとつなんだよ、ということで、横に置いておきたいという方もいらっしゃるかもしれません。
このオキドコロが定まっていないと、がんであることを「言う」か「言わないか」の二択の議論になってしまいます。
働いた後もより良く生きていくためには、どういうふうに自分のがん経験を考えていくのか、そして、社会にあっても友達との関係性の中にあっても、場所は変わってもひと続きの人生のストーリーとして、がん体験をどういうふうに考えていくのかなということ、そして、就職した後も定着して働いていくということ、その後も豊かな人生を歩んでいくということを考えていってほしいなと思っています。
引用元: 「小児・AYAがん経験者のための就活講座 2限目【言う?言わない?あなたにとってがん経験とは?】」
一般社団法人CSRプロジェクト 代表理事 桜井なおみさん
あ、本当だ・・・二択の議論をしようとしていたかも。
次男にとっての「病気のオキドコロ」はどこだろう?
人生のストーリーとしてがん経験をどのように考えるのか
まずは、自分のがんの経験をどこに置くのか一緒に考えました。
私は、次男が自分の病気や障がいについて周りの人に話してもいいと思っていますが、就職試験のときに会社に伝えることと、友だちに話すのとは訳が違います。もし次男が会社側に小児がん経験者であることを伝えるのであれば、病名だけでなく現在の状況と入社後の就労にどれほどの影響があるのか伝える必要があると考えています。
一般の方が病名を聞いてイメージすることは、メディアから得た情報が大きく影響するのではないでしょうか。ほんの一部の情報によって誤解されるのはとても残念です。
「ちょっと考えてみる」次男の答えはすぐに出ませんでした。じっくり考えた後、三者懇談会を前に、もう一度次男と話しをすることに。
自分のがん経験をどのように考えるのか
「僕は、小児がんだったことを面接の時に言わない。今は健康だし、病気だった時の記憶はほとんど残っていない。小児がんだったから困ったことはないけど、障がいがあるから配慮してもらいたいことはある。それはきちんと伝えようと思う」
次男とは高校の進路選択をする頃から、得意なことと不得意なこと、これは無理だという仕事(たとえば専門的な知識や資格がないとできない仕事、自動車を運転しなければならない仕事、工事現場など危険な作業が伴う仕事など)について、何度も話し合ってきました。
次男は自分で「楽しい!」と思える仕事を見つけました。その会社で働く方たちは次男をあたたかく迎えてくださり、3度の実習(春と秋に各2週間、夏休みに5日間)を経験させていただきました。
障がいについては、職場実習を受け入れていただく際に、会社側が知りたいと思われたことは先生を通じて伝えていただきました。人事の方は、次男の学校での様子やパニックになったりすることはないか、投げ出してしまうことはないかなど、継続して働くことができるかどうかを心配していらっしゃいました。
就職した後も定着して働き、豊かな人生を歩んでいく
次男の面接は採用の可否を決めるものではなく、採用を前提に個人用の求人票を作成するために行われ、私と担任の先生も同席して雇用条件について話し合いました。
志望動機などの難しいことは質問されず、困り事やその対処法について質問され、次男は自分の長所と短所を自分の言葉で伝えることができたので、隣にいた私は一安心。
仕事だけでなくプライベートも充実できるような働き方、人生の楽しみ方、職場での困りごとを自分で解決できるように、自立できるように、人事の方からお話がありました。
次男はこれからの人生を楽しみにしているようです。毎月家にもお金を入れてくれるそうで、テレビや一眼レフ購入計画も!洗濯機も買ってくれないかな~。