造血幹細胞移植後のワクチン再接種助成について、地方公共団体と国の審議内容と経過をまとめました。
平成28年地方分権改革に関する提案内容と各府省からの回答、地方公共団体が国へ提出した要望書のまとめ、再接種支援実施状況調査の結果、国会と厚生科学審議会の議事の要約です。
地方公共団体から国へ提案
再接種の経済的負担の軽減及び事故の際の補償が必要
内閣府地方分権改革推進室では、2016年3月17日~6月6日までの間に地方分権改革に関する提案を募集しました。
地方から303件の提案があり、この中で長岡市ほか複数の地方公共団体から、骨髄移植などの治療によって再接種が必要となった場合の経済的負担の軽減及び事故の際の補償が必要であると提案がなされました。
< 具体的な支障事例 >
小児白血病の臍帯血移植や骨髄移植等を行った場合、移植前に接種した定期予防接種の免疫が消失するため、医師から受けなおしを推奨された事例がある。
現行では、再接種は定期接種とならないため全額自己負担となってしまい、経済的負担が大きい。(市単独で助成を行っている自治体もある。)また、事故の際の救済措置については、定期予防接種のように受けることができない。
引用元: 平成28年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項(54ページ)
各府省からの第1次回答 ⇒ 対応は困難
各府省は地方分権改革に関する提案に対し、医療行為により免疫を失った場合の対応は想定外などの理由で、経済的負担の軽減及び事故の際の補償についての対応は困難であると回答しました。
- 疾病の発生及びまん延の予防という目的を達成する上で、各感染症に罹患しやすい年齢等を踏まえ接種年齢や接種回数を法令で定めた上で実施しており、定期接種を既に終えた方が、医療行為により免疫を失った場合の対応は、想定されていない。
- 同種骨髄移植を受けられる方の年齢は、小児に限らず幅広い年代にわたっている。
再接種助成対象者の年齢について
提案団体・追加共同提案団体は、再接種助成の対象者となる方の年齢について下記のとおり見解を示し、20歳未満の再接種者も特例措置の対象とする制度改正を求めました。
- 対象者は定期接種実施要領の「長期にわたり療養を必要とする疾病にかかった者等の定期接種の機会の確保」で示されている年齢を想定されており、疾病の発生及びまん延の予防に寄与するものである。
- 再接種者も特例措置の対象とする制度改正(20歳未満対象)を実施し、予防接種法に規定されるA類疾病の発生及びまん延を防ぐための定期接種としていただきたい。
「長期にわたり療養を必要とする疾病にかかった者等の定期接種の機会の確保」については、下記のページに詳細を記載しました。
各府省からの第2次回答
⇒ 医療行為により免疫を失った場合は想定外
- 免疫は被接種者全員に必ずしもつくわけではなく、免疫がついていない場合の再接種まで予防接種法において認めているものでは無い。そのため、医療行為により免疫を失った場合に別途対応することは予防接種法において想定していない。
- 定期接種実施要領の「長期にわたり療養を必要とする疾病にかかった者等の定期接種の機会の確保」は、一度も定期接種の機会がなかった者に対する接種機会の確保のための特例であり、すでに定期接種をした者の状況とは異なるため、同列のものとして取扱いはできない。
引用元: 2020.01.27 第37回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 資料3-5「造血幹細胞移植後の接種について」
地方公共団体は国へ要望書を提出
地方公共団体は、骨髄移植などの医療行為により抗体が消失した場合の再接種についての要望書を国へ提出しました。要望をまとめると下記の4項目になります。
- 定期接種として位置づける
- 健康被害が生じた場合には、定期予防接種と同様に国の救済措置制度の対象とする
- 被接種者及び保護者への経済的負担を軽減する
- (再接種に限らず)定期接種に係る財源については、全額国庫負担とする
インターネットで検索して確認できた要望書を下記に掲載します。