予防接種でワクチンを投与された後に、局所反応(接種部位の腫れ・しこり・痛み)や全身反応(発熱・発疹)などの副反応が発現することがあり、軽度であれば数日で自然に回復しますが、合併症を引き起こすなど重症の場合は治療が必要になります。

予防接種の副反応で、合併症の治療を受けた・後遺症が残った・亡くなった場合に支払われる給付制度があるのをご存じですか。給付の対象はワクチンの副反応に関するものであり、原疾患に関するものは対象外です。

この制度は、受けた予防接種が「定期接種」または「任意接種」によって手続きする先が違い、補償内容も違います


小児がん治療前に受けた予防接種の抗体が治療後に消えてしまった場合は、再接種する必要があります。この場合は「任意接種」になるので、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の「医薬品副作用被害救済制度」が適用されます。

このふたつの救済制度、後遺症が残ったり亡くなったりしたときの補償内容は定期接種の場合に適用される「予防接種健康被害救済制度」のほうが手厚く、通院にかかる医療費については「医薬品副作用被害救済制度」の場合、「入院を必要とする程度」でなければ認定されません

今回は、定期接種の「予防接種健康被害救済制度任意接種の「医薬品副作用被害救済制度、それぞれの給付内容の説明と補償内容を比較しました。

予防接種による副反応について

まず最初に、副作用と副反応の違いについて見てみましょう。

副作用と副反応の違いは?

病気の治療に使う薬の主な作用を主作用といいます。そして、主作用とは異なる別の作用や体に良くない作用のことを「副作用」といいます。

一般的には医薬品などによって生じた患者さんにとって不都合で有害な作用が起こった時に使われます。

ワクチンの場合には、ワクチンの投与(接種)によって体に免疫反応が起こり、それによって感染症の発生を防ぐ免疫ができます(主作用)。

この時に免疫ができる以外の反応(例えば軽ければ発熱・注射部位のはれ、重ければ脳炎・脳症など)が発生することがあるので、医薬品による副作用とは分けて「副反応」という用語が主に用いられます。

引用元: 「予防接種の副反応と有害事象」~日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」~

給付の種類と給付額(2019年10月現在)

治療をする場合の補償は同額ですが、後遺症が残ったり亡くなったりした場合の補償額には大きな差が見られます。

※ 下記の一覧表の定期接種には、高齢者が対象となるB類疾病と、まん延予防上緊急の必要がある場合に実施される臨時接種を含んでいません。

治療をする場合の補償

治療をする場合の補償

医療費

副反応による疾病の治療にかかった費用のうち、健康保険等による給付の額を除いた自己負担分を実費補償します。

 定期接種
(A類)
任意接種
医療費自己負担分を実費補償自己負担分を実費補償
通院の給付入院相当に限定しない入院治療を必要とする程度

医療手当

入院通院に必要な諸経費(医療費以外の費用)が支給されます。

医療手当
(月額)
定期接種
(A類)
任意接種
通院の給付
入院相当に限定しない
入院治療を必要とする程度
通院3日以上
36,800円
36,800円
通院3日未満
34,800円
34,800円
入院8日以上
36,800円
36,800円
入院8日未満
34,800円
34,800円
同一月入通院
36,800円
36,800円

後遺症が残った場合の補償

後遺症が残った場合の補償

障害児養育年金

副反応により一定程度の障害の状態にある18歳未満の人を養育する人に対して給付されます。

障害児養育年金
(年額)
定期接種
(A類)
任意接種
1級
1,572,000円
873,600円
2級
1,258,800円
699,600円

障害年金

副反応により一定程度の障害の状態にある18歳以上の人の生活補償等を目的として給付されます。

障害年金
(年額)
定期接種
(A類)
任意接種
1級
5,032,800円
2,796,000円
2級
4,026,000円
2,236,800円
3級
3,019,200円
なし

介護加算

障害児養育年金、障害年金受給者のうち、在宅の1級・2級の方に加算されます。

介護加算
(年額)
定期接種
(A類)
任意接種
1級
843,600円
なし
2級
562,400円
なし

死亡した場合の補償

死亡した場合の補償

死亡一時金・遺族一時金・遺族年金

一時金は、亡くなった方の遺族に見舞等を目的として給付されます。

遺族年金は、生計維持者が副反応により死亡した場合に、その遺族の生活の立て直し等を目的として、最高10年を限度として給付されます(死亡した本人が障害年金を受給していた場合、その期間が7年未満のときは10年からその期間を差し引いた期間給付され、その期間が7年以上のときは3年間給付されます)

 定期予防接種
(A類)
任意予防接種
一時金
(死亡一時金)

44,000,000円
(遺族一時金)

7,333,200円

生計維持者でない場合
遺族年金
(年額)
なし
2,444,400円

生計維持者の場合

葬祭料

亡くなった方の葬祭を行うためにかかる費用として給付されます。

葬祭料
定期接種
(A類)
任意接種
(定額)
209,000円
209,000円

健康被害者と認定された数はどれくらいいるの?

健康被害者と認定された数はどれくらいいるの?

それでは、実際に予防接種健康被害救済制度の認定を受けた方はどれくらいいるのでしょうか。給付種類別・ワクチン別に調べました。

給付種類別の給付件数

予防接種健康被害救済制度の給付件数

申請した方の約8割が認定されました。下記の表は、平成19年4月~平成23年3月までに認定された人数です。

該当年度H19
年度
H20
年度
H21
年度
H22
年度
H23
年度
医療費・医療手当4548272641
障害児養育年金37425
障害年金43537
死亡一時金20215
遺族年金00000
遺族一時金00000
葬祭料21215

引用元: 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会配付資料:参考資料13「予防接種制度について(参考資料)」7ページ

医薬品副作用被害救済制度の給付件数

申請した方の約8~9割が認定されました。下記の表は、平成26年~平成30年までに給付を受けた方の人数です。

単純に人数だけ予防接種健康被害救済制度と比較すると数が多いので驚きますが、医薬品副作用被害救済制度は予防接種限定ではありませんので、大きな差が開いてしまいます。

該当年度H26
年度
H27
年度
H28
年度
H29
年度
H30
年度
医療費1,1081,1461,1901,1781,156
医療手当1,1511,2201,2691,2401,206
障害年金3747534535
障害児養育年金28642
遺族年金3123313627
遺族一時金4532383835
葬祭料7253737562

引用元: 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 「平成30事業年度業務報告(案)」51ページ

ワクチン別・給付種類別の件数

昭和52年2月~平成30年末までの、ワクチン別・給付種類別の件数です。

※ワクチンにより集計期間が違います。BCG・日本脳炎は昭和52年2月以前に定期接種となっていますが、その他のワクチンは定期接種になった時期が違います。

MR(H18.4~)、DPT-IPV(H24.11~)、Hib・小児肺炎球菌・HPV(H25.4~)、水痘(H26.4~)、B肝(H28.4~)

 総数医療費・
医療手当
障害児
養育年金
障害年金死亡一時金・
遺族年金・
遺族一時金・
葬祭料
BCG718712132
日本脳炎227169143311
MR6352722
DPT-IPV2120001
Hib2423001
小児肺炎球菌2826002
HPV2826020
水痘97101
B型肝炎77000

引用元: 厚生労働省「予防接種健康被害救済制度 認定者数」

小児がん治療後の再接種を「定期接種」と同じ扱いにしてほしい

小児がん治療後の再接種を「定期接種」と同じ扱いにしてほしい

私が思うこと

「定期接種」のワクチンは、子どもたちが心も体もすこやかに成長し、社会の一員となって生活する上で必要な抗体をつくるためのもの。

小児がん経験者たちが、健康な子どもたちと同じ環境で健やかに成長できるように、地域や貧富の差によって受けられる医療に違いが出ることのない制度の創設を求めます。

自治体へ、そして国へ声を届けよう

経済的な理由で再接種できず、感染症にかかったり重篤な状態に陥ったりすることがないように、お友達に感染させて病気をまん延させることのないように、この先も健やかに成長できますように・・・そう思いながら、自治体へ、そして国へ声を届けようと動いている仲間がいます。

参考サイト

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